ワインの評価が日本酒に⁉︎

跳ねる柑橘(@hoppingnaranca)です。
今回は、ワイン…と思いきや日本酒のお話です。
2016年8月末、世界的なワイン評論家であるRobert M Parker Jr.氏が手掛ける
ワイン雑誌「The Wine Advocate」誌が、日本酒78種を評価したリストを発表しました。

これにより今後、ただでさえ品薄とされる最高品質の日本酒が更に入手困難になるとの懸念や、価格の上昇も考えられています。
この日本酒評価リストがどういう意味を持つか、ワインについてあまり詳しくない方向けに書いて見ました。
勉強中の身で書くため、一応裏付けは取っていますがワイン愛好家の方々からはもしかしたら「違うぞ!」とご指摘を受けるかもしれませんが、どうぞ。

Robert M Parker Jr.氏とは

Rober M Parker Jr氏(以下パーカー氏)は世界的な影響力を持つワイン評論家です。
もともとは弁護士だったそうですが、ワインが大好きで、愛好家・消費者目線でワインを評価しようと雑誌を作ったそうです。
彼の驚異的な味覚と記憶力からつけられるポイント(評価)は、ワイン生産者、ディーラー、愛好家たちの目に留まり、現在「The Wine Advocate」誌(robertparker.com – The Wine Advocate :以下WA誌)は、世界でも最も影響力と信用度を持つワイン雑誌のひとつとなっています。

パーカー・ポイントとは

このthe WA誌で取り上げられたワインにつけられる評価がパーカー・ポイントです。
WA誌は一切広告を載せておらず、公平な視点で評価をしているとされ、それもこのパーカー・ポイントが重用される所以のひとつ。
50~100点で評価が行われており、WA誌で扱うとなった時点で50点は与えられます。
そこから、色や香り、味など様々な要素が評価されてポイントが決まります。
80点以上を獲得したワインは優れた出来とされ、90点以上だとワイン愛好家がこぞって欲しがります。

ここで気をつけたいのが、このパーカー・ポイント、全てをパーカー氏が付けているわけではないということです。
WA誌には評価をする人が複数います。また、取り扱うワイン候補を載せたリストを作る人もいます。ワインは世界中で作られていますから、何でもかんでも飲むのは無理ですからね。

このポイントの何がすごいか

これだけだと、ワインをよく知らない、全く知らないといった人からは、「道楽のおっさんの感想じゃないの」となるかと思います。私も最初そう思いました。
ただ、パーカー・ポイントの影響力は半端じゃないです。
例えば、ワインの本場フランス、ボルドー地方の格付け1級ワインなどは大抵85点以上になりますが、それらのワインはパーカー・ポイントが公表されてから価格が設定されるとされます。

ボルドーの1級ワインの造り手は、世界トップクラスのワイン生産者です。
そんな彼らがおうかがいを立てるのだから、パーカー・ポイントがどれくらい生産者、そしてワイン市場に強い影響力を持っているかがわかります。「ボルドーの格付け1級ワイン」ってなんやねん!という方もいるかも。それは近いうちに書きます。

一言でいうと、長いこと「このラベルのワインはとにかくすげーんだ」とされている5つのワイン銘柄です。
近年パーカー・ポイントで特に優れた評価を得たのは、いま挙げたフランス・ボルドーの格付け1級ワインのひとつ、2010年の「シャトー・ラフィット・ロートシールト」の98点。
あとはカリフォルニアの赤ワイン、2008年の「インシグニア」が97点でした。
このパーカー・ポイントは滅多に100点は出ません。その評価で97、98点というのは信じられない評価なんです。
ただでさえ奥が深く、ニュアンスの言葉に満ち溢れているワインの世界。そこにはこんな凄いおじさんとその評価があるんです。

WA誌の日本酒リストとは

さて、散々パーカーさん凄い!と言ってきましたが、そのパーカーさん率いるWA誌が発表した「すげー日本酒78選」とでも言うべきリスト。
それがこれ(http://www.erobertparker.co.jp/info/52_info.php)です。
有名どころが多いのはわかるんですが・・・実を言うと、私はそんな日本酒わかんないんです。

この中で言うと、飲んだことあるのは、梅乃宿さんとか、浦霞、白鶴、龍力、七福神とか・・・かな。
梅乃宿さんはあらごし梅酒も日本酒も美味しくて好きです。
と、リストの日本酒があんまりわからなかったんで、日本酒が好きな友人U君に聞いてみました。

「一部がっつりした味のもあるけど、多くはスッキリとキレイな味わいの日本酒だったり酒造さんだね。僕はワインはあんまわかんないけど、どこか白ワインのイメージを持って日本酒を選んだような印象を受けるね」

なるほど。ふーん。
・・・いやいや、ありがとうU君。

さて、私は日本酒のことは、昔バイト先で常連さんに教えていただいたのと、マンガ「もやしもん」の知識しかありませんが、このリストのほとんどは「純米吟醸」「純米大吟醸」ですね。

「『純米(大)吟醸』ってなんやねん!」

にざっくりと説明しますと、まず「純米」とは、米と麹と水以外使ってません、ということです。
合成アルコールを添加していると純米は名乗れません。
次に「吟醸、大吟醸」というのは、そのお米の精米(削り)具合の基準です。吟醸酒は精米歩合50%以下、大吟醸は精米歩合60%以下です。お米の粒の真ん中の方だけを使ってる、ってことですね。
「ただの「純米酒」でも美味しいのはあるのに・・・」とU君。
でも確かに吟醸酒の方が、スッキリ感と一言で言っちゃっていいかわかりませんが、そんな感じがありますよね。白ワインに近いモノが。ただの純米酒にある米の甘みや旨みみたいなものは、外国人の人にはあまり馴染みがないのかもしれません。

さて、ここでまた注意です。
パーカー氏自身も日本酒を飲むことはあるそうですが、このリストは、日本人Haruo Matsuzakiさんが800銘柄の日本酒をリストアップして、そこからWA誌のアジア担当であるMartin Hao氏が78品目を選び、ポイントを付けたようです。

WA誌のプレスリリースにあるんですが、登録しないと読めないので、これについて書いてある記事がこちら。但し英語です。
The Gray Report: Wine Advocate set to release sake ratings

パーカー氏自身による評価か違うレビュアーの評価か、という点がどれくらい国際的な日本酒市場に影響するかわかりませんが、チームWA誌の中国人の方が評価したという点には注目です。そこ日本人じゃないんかい!と。笑
まあ、近年日本酒ブームは日本国内ではなく海外で起きているわけだから、舌の肥えた日本酒通が海外にいてもおかしくはないですけど。
また、先の「純米酒はないんかーい」というコメントに対しても、プレスリリースにありました。(上の英語記事にも)

最初に選定したMatsuzakiさんが、
800 polished, pure rice sake
を選んだらしいです。

最初から純米吟醸、純米大吟醸に絞って選んでたんでしょうね。
「大吟醸至上主義め!」というU君の嘆きが聞こえてきそうです。

このリスト発表で起こりそうなこと

さて、このリストが発表されたことで何が起きるでしょうか。
まず、もう起こっているでしょうが、リストに載った日本酒の買い占めが起きるでしょう。
ワインも少ないものはありますが、日本酒の場合、非常に生産量の少ない銘柄が多いので、その稀少価値はぐーんと上がるでしょう。
まあ、そもそもここにある日本酒の多くは、高級料理店やホテルなどが仕入れていて、小売市場にはそんなに出回らないのかもしれませんが。
もう一つは海外からの目ですね。日本酒ブームは海外で起きています。そのため、日本酒の国際市場に大きな影響が出そうです。

国際ワインコンクールや品評会に日本酒が出品され、高い評価を得ることがあるんですが、(rice wineとしてなのか、出品は結構されてます)今後は外国人が日本酒を見る際に、そういったコンクールの受賞歴に加えて、パーカー・ポイントという視点も加わることになります。

さらに、価格の上昇は考えられます。買い占めによって稀少価値が増しますからね。それによって、消費者としてはお目にかかる機会が減ったり、手が出させない値段になるかもです。
ただ、日本酒は同じお酒でも、ワインよりも圧倒的に安い価格で買えるお酒です。オークションで買うとかは別ですよ。
例えば、上であげたパーカー・ポイント98点の2010年のラフィットは、諭吉さん1人ではまず買えません。諭吉1ダースはいるかも。一方で、日本酒は人気銘柄でも諭吉さん1人入れば多くの場合は買えます。
このことから窺えるのは、いままで、酒造さんは非常に苦しい立場でお酒造りをしてきたんだろうな、ということです。

テレビなどでの知識ですが、酒蔵さんの1年の作業は大変なもののようです。
今回のリスト化とその発表によって、酒蔵さんの、ある種の地位向上がなされるかもしれません。
同じことが過去、ワインの世界でありました。
アメリカのカリフォルニア州は、アメリカ最大、そして世界でも有数のワイン生産地域です。ナパ・ヴァレーやソノマという地区が有名です。
1970年代までは安価でそこそこのワインを作っている、悪く言えば「安ワイン生産地域」みたいな認識をされていました。しかし、2つの出来事でカリフォルニアワインの地位が向上しました。

1つは1976年にパリで行われたティスティング大会。それは「パリスの審判 ワイン」とかで検索してみてください。

2つ目は、1980年代、WA誌がカリフォルニアワインに高評価をつけたことです。
カリフォルニアのワイン生産者は本場フランスで必死にワイン造りを学んで、自分たちの畑や醸造場でのワイン造りに活かしていました。その結果、年々良質なワインを作るようになっていました。
「パリスの審判」以降もしばらくは、カリフォルニアワインはまだ2流、みたいな風潮だったようです。しかし1回のテイスティング大会だけでなく、他の品評会などでも高評価をたたき出し、さらにパーカー・ポイント高得点というお墨付きを得て、アメリカワイン産業の地位は上がって行きました。
今では「カルトワイン」と呼ばれ、一部のワイン愛好家に熱狂的な支持を得ています。値段も、さくさくっと5万以上したりするものもあります・・・。

もしかしたらですが、このリストが、酒蔵さんにとってプラスに働く(増収とか、産業への注目が増すとか)かもしれません。
まあ、今後もWA誌が日本酒を扱うとか、そういう継続性が無いとただのブームになってしまいますが。

おわり

いきなりWA誌だのなんだのと書いてみましたが、タイムリーにそういうニュースがあったので書いてみました。
またワインについて、もっと基本的なところとか、コムズカシイ話でなく楽しむには、などの記事も書きたいと思います。
なお、私は別にパーカー氏信奉者かというとそうでもないです。ただ、影響力はあるので、ワイン販売をする人には絶対見逃してはならない存在じゃないかなと思います。

御詳しい方、もし、「お前まちがえまくりじゃないか!」とかあったらご指摘下さい。
たぶん無いと思うんですが・・・。

では、また。

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